店は、塩煎餅を製造してパンを副業とする店と、食パンを製造して菓子パンをかたわら売るという店と、ただこの二軒が残って続いて営業しているのみ、その他は屋号こそ旧のままなれど、店主は何代か変っているのである。まことに心細いことではないか。
いったいパン屋なるものはきわめて金高の少ない薄利な商売であって、卸しの割合は二割から二割五分増しを通例とするが、これがすなわち純正の利益とはならぬ。この内から袋代を払い、ガラスの器物の破損をも償い、また菓子パンのローズとして売物にならないものが出来てきて、かれこれ損害の分を差引き、平均一割の儲けとなればごく上出来である。こうして普通受売屋の一日の売上げ二円より三円五六十銭を普通とし、四五円を得る店は甚だ稀れである。かりに五円の売上げと見積って一ヶ月の利益僅か十五円に過ぎぬ。以上は受売パン屋の内情を少しく述べたものであるが、これより製造の内幕を開いてみよう。但し食パンの製造は素人にはちょっと手の出せる事業ではないから省略することにした。
いったい何でも製造ということは、素人目には非常な利益が多いように見えるものであるがその実全くこれとは反対である。何故な
前へ
次へ
全330ページ中280ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
相馬 愛蔵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング