なく、コーヒー、ココア、洋菓子、食パンも添えて客に出すのであるが、いったいミルクホールというのは至極手間のかからない、簡便な弁当代りのものを認めるところであるから、昼食と夕食時刻の前後には、あいている椅子のないほど客が充満して、数人の人手を要してなかなか忙しいが、その時刻以外には、店番の必要はないくらい、客足が遠くなって手持無沙汰のことがある。この忙しい時の助力がことごとく雇人でもあれば非常に不経済になる。前後の閑な[#「閑な」は底本では「閉な」]時にもこれらの雇人の手を遊ばしておき、そして給金を払わなければならないのであるから、その時間を利用して、牛乳の配達を兼ねざれば経済が立たぬ。一合のミルク普通四銭を定価とし、平均店と配達とにて一日二斗内外の牛乳を売れば家族の数人の生活費は得られるであろう。但しこの商売ほど同業者多くして、競争の激烈なものは他に比較を見ないところであって、彼らは一度得た得意を逃さないためには、巣鴨の如き僻陬の地から、浅草深川の如きとび離れた場所へも喜んで配達するのである。そのくらい勉強をしなければ得意は取られてしまうからである。ある牛乳屋は自分で牧場を持ちながら自
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