場所の近傍を得意とするつもりならば、新来住者の多い地を選ぶが得策である。日本橋区の如く、区内の多数人士がことごとく多年その土地の住者で、すなわち生粋の江戸人の住んでいる所は、いわゆる老舗のみが信用あって、新店は信用が少ない。しかし本郷牛込等の如く新移住者多き地方か、神田の如く学生等の多い所では勉強さえすればたちまち繁昌するものである。その実例は神田で最も繁昌する某薬店[#「某薬店」は底本では「其薬店」]は、十年前日本橋区内に開店して三年間大勉強して売出したが、少しも得意はつかない。そのためやむを得ず神田に移転して前にも劣らぬ勉強をしたところがたちまちにして大評判となり、繁栄を来したとのことである。
四、商店と日受
日光は生物を生長せしむるには必要欠くべからざるものなれども、これが商店の上にテラテラ夕日朝日の直射を浴びる時は、品物は少なからず損害を蒙るものである。しかし全く朝日夕日の当らぬ店といえばずいぶん難しい注文ではあるが、新たに店を開かんとする人はよほどこの辺の注意を要する。日光の直射を受ける店ならば、場所は如何に理想的であっても、店が如何に立派であっても、その商売の
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