商人は一国の主人同様

 最後に申し述べたいのは彼の国における商人の地位についてであります。
 日本では昔から士農工商といって商人を最も低き階級として社会的に軽視する傾きがあるので、温泉場などへ遊びに行った際など、何々商と記さずにかえって無職などと記すのを見るくらいで、また立派な商人も資産が出来るとたちまち今までの商業を捨てて無職の資産家となって隠れることなどは実に国家のためにも憂うべきことであります。
 西洋では商人は非常に尊敬され、イギリス[#「イギリス」は底本では「イぎリス」]においてはマーチャント・プリンス(商売王)という言葉があるほどで、社会的に重んぜられていることは驚くのほかありません。英国は商をもって立つ国で、その大海軍も商権保護のために造られ、またかの世界大戦も商権をおびやかさんとする独逸を圧するがためでありました。
 商人は一国の主人同様にて大臣の如きはその番頭の如く見られるほどで、これはひとりイギリス[#「イギリス」は底本では「イぎリス」]のみに限ったことでなく、ドイツ等においても同様で、私の如き者も商人であるがために至るところにおいて意外の厚遇に接し恐縮したことが
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