舎廻りの役者でもあるまいから檜舞台へ出て見たい気もするが、さて銀座あたりへ出るとなれば二三十万の金は用意してかからねばならず、それを投じたからといって果して収支償うかどうかが疑問である。しかも既存の同業者に与える打撃も相当多かろうと思う。かように考えると、いい加減で仏心をおこして、余り勢に乗じない方がよかろうと思う。」
「いまの小売商は救われて行くと思われますか、またデパートについてどう考えられますか」
「古いありきたりの行き方をしていたのでは小売商は衰滅するよりほかあるまいと思う。何しろ小売商人は多すぎる。小売商の平均売上高は一ヶ年五千円弱ということだそうだが、一日十五円程度の売上ではなかなかやっていけない。そこで娘を働きに出すとか、内職的にやるとかしてどうにかやっている。それがまた商売に積極的に身を入れない理由にもなるわけで、日本の小売商の進歩しないゆえんでもある。米国の小売商売は日本の約五倍くらい売っている。日本の小売商、ひいて中小企業であるが――これらの前途にはまた多くの困難が横たわっている。その一つに百貨店とか産業組合とかいう大資本のものが、それぞれ自給主義をとって行くという
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