屋のものだったので、あらためてとりつけの店の品と試食してみたところ、何ら遜色がない、しかし価は廉いというので、店へ注文されるようになった。しかしこうして認めて貰うまでにはなかなかの努力と苦労があるものである。」
「主人が店頭に出て金を受取ったり、品物を渡したりしているようなことでは駄目だというのはあなたの所論だそうで、お店にも滅多に顔を出されぬと聞いていますが、それはあなたのように立派な御子息がお店を切回わしていられるから、そういうことをいっていられるのではないだろうか」
「私だって毎日店へは出て居ます。それはただ三人や四人の店員を使っている店では、主人も一緒になって働かなくてはならないが、二三十人からの店員を使うような店では、主人が使用人と同一になって、一局部の仕事に没頭しているようではいけないというのです(中村屋には二百幾十人の従業員がいる)。単に主人ばかりではない。職長とても同じことで、高給を取る職長になればなるほど自分で仕事などしない。職工達をよく指導監督して、材料の無駄、時間の無駄のないようにと仕事の手順を按配してやって、総体的に能率をあげるようにする。自分で仕事に没頭してい
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