寄宿舎に大きな三尺角の机を渡す。すると、全部の者が習字するようになった。従って、技を競う関係上、外へも遊びに出ず、一生懸命になってやる。
 また、算盤を教えると、だいぶ上手になった。私は、どちらかというと算盤は得意の方で、みんなが算盤をやるとき、自分も一つやってやろうというので、私の算盤がいつも標準になるくらいである。ところが、半年、先生に算盤を教えさせたら、今では少年の方が私よりも上手になってしまった。
 この間も先生が来て、私は商業学校のほかに五ヶ所ばかり数学を教えているが、算盤はお店の子供が一番出来がいいと言うから、あなたはお世辞を言っては駄目だ、と私が言うと、お世辞ではない本当だと言う。
 あるいはそうかも分らない。向うは学科がいくつもあり、算盤はどっちかというと軽蔑されている。私の方は学科はいくつもなく、算盤に興味をもってやるので、上手になるのは当り前である。向うは一週間に四五時間だが、私の方では一週間に僅か一時間で、しかも半年で、向うの二年ぐらいに追いついたというのだから面白いではないか。

    店員は家族

 今は家族的に団欒は出来ない。というのは、二百七十人ほども店
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