ず二千円くらいの予算であった。ところがオホッキーは四千円くれという。
「自分は世界のどの技師にも劣らない自信がある。だから四千円でなければいやだ。鐚《びた》一文でも欠けるならたとい自分は餓死するとも雇われない」
というから、私は大奮発して要求通りの契約をした。
ところがいよいよ仕事をさして見ると、予期以上だったので驚いた。彼はすべてのことに通じて居るのみならず、絶対に物を粗末にしない。紙一枚、小布一片といえども貴重品の如く大切にする。例えばチョコレート製造の際に使用するハトロン紙などでも、擦り切れてほとんど使用に堪えなくなるまで、何回でも繰返し繰返し使用する。またチョコレートや砂糖を紙でしぼって、飾り菓子を造る時に、従来の職人だと、しぼった後のチョコレートや砂糖のいっぱいついた紙は、そのまま芥溜に捨ててかえりみなかったものであるが、オホッキーは粉をかけて奇麗に拭い取り、全くの白紙にしてからでないと捨てない。
また、彼は工場の清潔と神聖とを保つために、他人の工場に入ることを絶対に許さなかった。就業中は主人といえどもみだりに許さない。そして彼の仕事振りはというと、また如何にも厳格であ
前へ
次へ
全330ページ中181ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
相馬 愛蔵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング