してはならないと、店の者皆に言い渡した。店では「一番のお得意様で惜しいではありませんか」と私のやり方に反対するものもあったが、私は断然初めの所信をまげなかった。
その翌日、翌々日と、持って来いとの注文があったが、「ただ今そちらの方へ都合がありませんからまことにお気の毒ですが」という調子で、いつも断ってしまった。こういうことがたび重なるにしたがって、電話の注文も来なくなった。ところが、今まで来たことがない肉屋の小僧が来て、大きな買物をする様になった。はておかしいなと思って、小僧にわけを尋ねて見た。「いや貴方のお店で○○さんの注文をお断りになったので私の方へとばっちりが来て困りましたよ、今も○○さんの所から電話で、中村屋さんのパンを買ってとどけてくれというので、今うかがったわけです、お蔭で私の所の用事が倍になりました」とのことであった。
いくらお客様でも、そのやり方が不合理な時にそのわがままを許さないというのが私の主義である。
よい商品が最上の奉仕
仕入は全部主人がせねばならぬ、それは主人が商品に対して絶対の責任を負わねばならぬからである。他人任せでは往々にして二流品が一
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