力を充分に挙げ得るを得たのであった。
かくの如くにして、一時的な大売出しの計画に成功せんとするよりも、むしろ一日一日の確実な売上げ増進に努力し来り、それがためには、味付パンに加うるに餅菓子兼営をもって、商売の繁閑盛衰を平均し常に製造販売の全能力を発揮するように考慮をめぐらして来た私は、その後新しく西洋菓子に手を染めたのに対し、またまた食パンの大量製産を始めてこれが調和を図り、今日では味付パン、餅菓子、食パン、西洋菓子の四工場を各々交互に伸縮自在ならしめ、一ヶ年間を通じて少なくも繁閑の変動なしにその全能力を挙げ得らるる仕組みにしている。そうして徐々に、堅実に、全体的の売上げ増進策をはかり、一年三百六十五日、毎日毎日が大売出しの意気込みで、顧客に臨みつつあるのである。
賃餅開始の苦心
ところで、私が売上げ高の平均、すなわち如何にして製造販売の全能力を発揮するかに苦心した一例を挙げると、それには、賃餅引受開始の苦心談がある。
賃餅とは、説明するまでもない東京の一風習であって、年末に各家庭がその必要な正月の餅を仕事師なり、米屋なり、また菓子屋なりに頼み、いつ幾日に何斗何升の餅
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