のか、米国は新開国であるため、長年の歴史によって世人を信用せしむる老舗がない。よって人を信用せしめ、自店の存在を知らしめるには勢い宣伝によるほかない。ところが欧州になると国が古いだけに、老舗というものが至るところにある。これらの店は別にそれほど広告をしなくても、長い間の暖簾《のれん》で人が買ってくれる。したがってそれほど広告が重要ではない、それゆえまたそれだけ物が安く売れるわけである。その代わりかけ出しの店がこれと肩をならべて行くことは容易ではない。宣伝すればするほど広告倒れとなって競争しずらくなる。
米国においても宣伝費は結局価格に転嫁されて、それだけ高くなりはしないかとの疑問が出るのであろう。しかし米国は大国である。市場が大きい、広告費は大量生産による生産費の引下げによって相殺される。
鵜の真似をする烏、日本の広告万能主義の人々が当然うくべき名前である。
配給費のこと
欧州では牛乳が安い。すべての物価が日本に較べてはなはだ高いのに、ひとり牛乳が特に安い。私はこの原因をつきとむるべく皆の寝ている中にホテルを飛出した。なるほど安いわけだ、大量生産のため安いことはもちろ
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