では店売のお客様との釣合を考慮し、また配達費の意外に莫大なる点に鑑みまして、遠方の御注文には配達料を戴くことにしてあります。これには御得意様の中にも「中村屋だけが配達料を取るとは怪しからぬ」と申される方もありますが、私の店のような安い商品を東京市中無料配達を致しましては、売上げの三割も配達費に失われ、とうてい商売は成立ちません。彼の百貨店の如く八方へ配達網をもってしましても、その配達費は意外にかさみ、三越で一戸当り三十二銭、松屋で四十銭と承りました。私の店ではおよそ五十銭となります。
 そこで、私はこれが対抗策を考究致しまして、配達料として電車賃の十四銭(但し五円以上は無料)を戴くことに致しました。配達実費の三分の一にも足りませんが、その結果は意外によろしく一円以下の小口の御注文も二、三円に改まり、過半は五円以上となりまして、一戸当りの御注文平均七円を超え、売上金高に対しての配達失費は百分の六に減じました。これを三越の百分の八(売上一戸当り四円)松屋の百分の十(売上同上)に較べかえって格安となっております。
 以上、申し述べました事は百貨店対抗策の一端に過ぎませんが、要するに小売商人が
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