でありますが、これが旧思想の商人の大なる欠点でありまして、今日一般の信用を失うた原因もここにあると思うのであります。
しかるに正札主義の真髄を解せず、「正札主義などは誰にでも出来る。我輩は今日からでもやって見せる」という人があるかも知れませんが、これはさように手軽に出来るものではありません。
正札主義とは、いったん定めた値段をただ頑固に値引しないというだけではありません。その経営においてあるいはまた商品の選択において、最善の努力と研究を致しまして、良品をあくまでも廉価に提供し、御得意に対し満腔の誠意をもって販売する事であります。例えば、私が一つの時計に三十円の正札を付けて売出した場合に、もしお客様が「お前のものと同じ品を、他店では二十五円で売っている」と云われて、その三十円が不当の値段でないにしても、他店で同じ品を二十五円に売っている場合は、正札主義の実行は出来難い事となります。ですから、正札主義をあくまで守り通すためには、品質、価格、双方ともに他店の追随を許さざるほどの研究と熱と意気とがなければならないのであります。
もしこの正札主義を完全に遂行する事が出来ましたならば、如何な
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