う誠に悲惨な有様であります。なかんずく、呉服類に至ってはその七割以上を百貨店が占めほとんど独占となってしまいました。
 かくの如く、百貨店は一般小商人にとっては実に恐るべき競争者でありますから、私は「どうかこれに負けない様に経営してみたい。如何にせば百貨店に匹敵するであろうか」と、このような気持で常に研究を致して居ります。
 昭和三年には、その調査のため欧州へもちょっと行ってまいりました。この旅行で少しく得るところもございまして、どうやら今日のところでは、私の店はどの百貨店にも負けないつもりであります。それで、「如何にして今日の結果を得たか」という点を手短かにお話してみたいと思います。

    信用

 小売商の第一に努むべき事は、御得意の信用を得るということであります。「そんなことは申さずとも当り前のことだ」と云われましょうが、今日までの商人の中には、「世間は広いから一生|騙《だま》しても、騙し切れるものではない」と云って、商売をなさる方も少なくありません。しかし不良品を売ったり、暴利を貪ったりしたならば、ただの一度であっても、たちまち御得意の信用は失われるものであります。

  
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