心を悩ますのです。
ついに長年行われていた中元歳暮の旧慣を廃し、絶対に問屋からつけとどけの物品を受けないことにして、ただちに問屋にその旨通告して諒解を乞うた。それでも名実ともに物を贈らぬ受けとらぬという店の鉄則を実行するには、相当の年数を要しました。
商人の妻はお内儀さん
私は本郷に店を持つとともに、先代中村屋のいっさいを継承しました。店員女中ばかりでなく、主婦をお内儀《かみ》さんと呼ばせることまで受けつぎました。いったい小売商人の家内を誰も奥さんとはいいません。奥さんは官吏あるいは教職にある人の夫人等、すべて月給生活をしている人の夫人にふさわしい称号ですが、小売店の主婦をお内儀《かみ》さんというのはこれも最も適当な称び方だと思うのです。それゆえ私は今でもあなた方にお内儀さんといわせ、奥さんとは決して称ばせない。うっかりあなた方が奥さんと私を呼ぶと、私はそっぽを向いて返事をしません。
もし皆さんがお内儀さんというのを奥さんというのより低いと思うならば、それはたいへんな間違いです。夫人あるいは奥さんの仕事の範囲は、いわゆる奥の仕事で、おもに家庭に属する雑多なものです。が
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