、一ヶ月を平均すれば二十四、五軒にすぎないから、これに十二円を割り当てると、一軒当りの配給費はまさに五十銭である。それゆえ御註文品の金高があまりに小さい時はお断りするほかないことになる。現在百貨店が配達網を八方に布《ひ》き、また遠方には配給所を設けて、専らその合理化につとめていても、なおその費用の莫大なのに当惑しているときくが、まことにさようであろうと案ぜられる。
 しかし一般個人店では、まだそれほど配達の必要少なく、したがって経費に悩まされた経験がないため、遠方からの註文に接すると店の光栄として、僅少の品でも喜んで配達するようであるが、もし詳細に計算したならば、利益以上の経費を負担して損失となっている場合が多いことと思う。
 私が欧州を視察したのも早や十年の昔となったが、パリ、ロンドン、ベルリンなどの都市で、牛乳が我が一合当り邦貨三銭であった。当時日本では一合五銭ないし十銭、平均七銭というところであったから、物価の高い欧州に来てどうして牛乳だけがこう安いのかと不審に思うたことであった。しかし調べてみるとあちらでは牛乳はほとんど軒並みの需要で、しかも一戸当りだいたい一リットル(五合五勺
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