くことも難かしくなるわけではないか。
以上、自分が改造を望まぬ所以《ゆえん》の大体を述べたが、なお細部にわたっては改めて語ることにしよう。
売上げに対する家賃の程度
商売と家賃の関係について考えて見る。
商売をするには適当な場所を必要とし、その場所を得るためには相当の資金が要る。私のいう家賃とは、この場所を手に入れまたそれを維持するための費用であって、必ずしも家主に払う家賃に限るわけではない。例えば諸子が独立するとして、まず商売の発展しそうな場所を探し、そこに適当な借家をみつけて借り受ける。そうして月々家賃を払い店を経営して行くのであるが、借家によらないで最初から自分の家を持ち、いわゆる家賃というものを払わないで済む場合もあるであろう。しかしその場合も家賃を払わない代り、家屋の建築費およびその利子、地代、諸税、保険料を合算するとほぼ家賃と同額になる。いずれにしても家賃だけのものは要るのであるから、私は借家であると持家であるとによらず、商店経営の中のかなり重要な部分を占めるこの費目を等しく家賃として計上することにしている。
売上げの金高に比較して家賃が高いと商売がやりにくい。実際家賃は商品の売価にそれがかかって行くので、いかに勉強したくても高い家賃を払って安く売ることが出来ない。『あの店のものは高い』と言われるのはそこで、客足少なくついに店は維持出来なくなる。表通りの堂々たる店に案外客が少なく、裏通りや狭い路地に意外に繁昌する店があるのは、みなこの家賃の多少に原因するのである。
それゆえ商売をするには売上げに対して比較的家賃の安いことが大切で、家賃が安ければ安いだけ経営が楽なわけであるが、なかなかそう好都合にはいかない。ではどの程度の家賃なればやって行けるかということになるが、私はまず一日の売上高で、一ヶ月の家賃を支払えるくらいのところを適当と考える。すなわち売上げから言えば三分三厘を家賃に当てるのであって、この程度であれば売価に影響するほどのことなく、尋常に営業していくことが出来るのである。もっとも喫茶店などは少しく事情を異にし、売上金高が小額でしかも相当華麗な室を設備せねばならぬのであるから、その装飾費を含む家賃は売上げの三日分くらいを要することになるであろうし、これに反し売上金高が莫大で、しかも店に装飾の必要なき卸問屋などでは、売上げの百分
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