よと始めは少しも取合はざりしが、おひおひこれも引込まれて、さういへば先づ似たといつたやうなものだね、それに花子さんの方の方のお名前は分らないとおいひのだね、困るネー、それが知れるとすぐ分るのだけれどもとこれも思案の首を投げて、それじやアお前明日にも花子さんを御尋ね申して、それとなく先方様のお名前を聞いて御覧、お父様への御返事はその上での事、それは何も申し上げぬ事にしませうとやうやく母も納得せしかば、君子は明るを待ち侘《わ》びて、いつになく身支度さへもそこそこにおのが上より友の上、案じらるるままに車を急がせ花子の方をおとづれぬ。
 さて花子に逢ひて、直ぐにもそれといひ出しかぬれば、しばらく四方山の話に時を移したる末、ネー花子さん、先だつてのあなたのお話は、甲田さんではございませぬかと突然の問に花子はサツと面を赤めしが、さあらぬさまにてイイエさうではございませぬ、があなた何故それをお尋ねなさるの、別になぜと申すほどの事でもございませんが、少し聞込みました事がございますのでと花子の顔色を窺ひしが、花子は何の気もなきやうにて、ソー甲田さんツて美郎さんの事ですか、さうです美郎さんと承りましたよ、
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