きゆ。加ふるに経世の略、稜々の節、今の時に当つて先生を外にして、はた誰にか竢つあらむ。しかもなほかつその隙を覗ひ、名望高節を傷つけむと試むるものあるにあらずや。
今や国家実に多事、内治に外交に、英雄の大手腕を要するもの、什《じう》佰《ひやく》にして足らず。しかも出処進退その機宜一髪を誤らば、かの薄志弱行の徒と、その軌を一にし、その笑ひを後世に貽《のこ》さんのみ。あに寸行隻言も、慎重厳戒せざるべけんや。すべからく持長守久の策を運《めぐら》し、力《つと》めて、人心を収攬せよ。人心の帰する所、天命の向ふ所には、大機自から投ずべし。その大機に会し、大経綸を行ひ、大抱負を伸べて、根本的革進を企図するも、未だ遅しとなさざるにあらずや。黄口の児|敢《あへ》て吻喙《ふんたく》を容《い》るるの要なきを知る、知つてなほかつこれをいふ、これ深く天下の為に竢つところあればなり。
顧《おも》ふに生や師恩に私淑し、負ふところのものはなはだ多し。しかるに軽挙暴動、妄《みだ》りに薫陶の深きに負《そ》むく。その罪実に軽しとせず。しかれども生がこの過激蛮野の行為を辞せず、一身の汚名を堵《と》して、微衷を吐露し、あへて一言
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