屋から四人も行くえ知れずになっていますからね。この部屋はおやめになったほうがようござんすよ」
「いや、おれはもうひと晩ここにいるよ」と、僕は答えた。
「悪いことは言いませんから、およしなさい。おやめなすったほうがようござんすよ。碌《ろく》なことはありませんぜ」と、大工は何度もくりかえして言いながら、道具を袋にしまって、船室を出て行った。
しかし僕は船長の助力を得たことを思うと、大いに元気が出てきたので、もちろん、この奇怪なる仕事を中止するなどとは、思いもよらないことであった。僕はゆうべのように薬味付きの焼パンや火負《グロッグ》を飲むのをやめ、定連のトランプの勝負にも加わらずに、ひたすらに精神を鎮めることにつとめた。それは船長の眼に自分というものを立派に見せようという自負心があったからである。
僕たちの船長は、艱難辛苦《かんなんしんく》のうちにたたき上げて得た勇気と、胆力と、沈着とによって、人びとの信用の的《まと》となっている、粘り強い、磊落《らいらく》な船員の標本の一人であった。彼は愚にもつかない話に乗るような男ではなかった。したがって、彼がみずから進んで僕の探究に参加したというだ
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