いる前でその戸をしめた時に、また半時間のうちに必ずあくと言った言葉を想い起こしたので、その窓がどうしてあいたのかを調べてみようと決心した。真鍮の金具類は非常に頑丈に出来ているものであるから、ちっとのことでは動くはずがないので、螺旋《ねじ》が動揺したぐらいのことで締め金がはずれたとは、僕にはどうも信じられなかった。僕は窓の厚いガラス戸から、窓の下で泡立っている白と灰色の海のうねりをじっと覗いていた。なんでも十五分間ぐらいもそこにそうして立っていたであろう。
突然うしろの寝台の一つで、はっきりと何物か動いている音がしたので、僕ははっ[#「はっ」に傍点]としてうしろを振り返った。むろんに暗やみのことで何ひとつ見えなかったのである。僕は非常にかすかな唸《うな》り声を聞き付けたので、飛びかかって上の寝台のカーテンをあけるが早いか、そこに誰かいるかどうかと手を突っ込んでみた。すると、確かに手応《てごた》えがあった。
今でも僕は、あの両手を突っ込んだときの感じは、まるで湿《しめ》った穴蔵へ手を突っ込んだように冷やりとしたのを覚えている。カーテンのうしろから、恐ろしくよどんだ海水の臭いのする風がま
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