れば、わたしは喜んで今の部屋に残っています。もちろん、この事件については何事も洩らしませんし、また、自分はあの同室の男の二の舞はしないということを、あなたにお約束できるつもりでいます」
 船長は僕のこの向う見ずな考えを諫止《かんし》しようと努《つと》めたが、[#「、」は底本では「、、」]僕は高級船員の居候《いそうろう》を断わって、かの一室を独占することにした。それは馬鹿げた事であったかどうかは知らないが、もしもその時に船長の忠告を容れたならば、僕は平平凡凡の航海をして、おそらくこうして諸君に話すような奇怪な経験は得られなかったであろう。今まで百五号船室に寝た人間のあいだに起こった再三の投身事件の不快な一致点は船員らの頭に残っているだろうが、もうそんな一致点などは未来|永劫《えいごう》なくしてみせるぞと、僕は肚《はら》のなかで決心した。
 いずれにしても、その事件はまだ解決しなかった。僕は断乎《だんこ》として、今までのそんな怪談に心をみだされまいと決心しながら、船長とこの問題について、なおいろいろの議論を闘わした。僕は、どうもあの部屋には何か悪いことがあるらしいと言った。その証拠には、ゆ
前へ 次へ
全52ページ中24ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
クラウフォード フランシス・マリオン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング