た僕は、突然に大きい物音で目をさまされた。その物音を調べようとして、同室の男は僕の頭の上の寝台から一足飛びに飛び降りた。僕は彼が不器用な手つきで扉《ドア》の掛け金や貫木《かんぬき》をさぐっているなと思っているうちに、たちまちその扉がばたりとひらくと、廊下を全速力で走ってゆく彼の跫音《あしおと》がきこえた。扉は開いたままになっていた。船はすこし揺れてきたので、僕は彼がつまずいて倒れる音がきこえてくるだろうと耳を澄ましていたが、彼は一生懸命に走りつづけてでもいるように、どこへか走っていってしまった。船がゆれるごとに、ばたんばたんと扉が煽《あお》られるのが、気になってたまらなかった。僕は寝台から出て、扉をしめて、闇のなかを手さぐりで寝台へかえると、再び熟睡してしまって、何時間寝ていたのか自分にも分からなかった。
二
眼をさました時は、まだ真っ暗であった。僕は変に不愉快な悪寒《さむけ》がしたので、これは空気がしめっているせいであろうと思った。諸君は海水で湿《しけ》ている船室《キャビン》の一種特別な臭《にお》いを知っているであろう。僕は出来るだけ蒲団をかけて、あすあの男に大苦
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