ですよ。ぐずぐずしてはいられません。今すぐ踏み込んで不意を襲いましょう!』
 奮然と立ち上ったガニマール刑事は、意気込すさまじく門外に出て六人の部下を引き入れた。
『よし! 課長! 用意は出来ました。ジュフレノアイ街にはピストルを上げて、すわと云えば一斎射撃、窓々をねらっています。さア、やっつけましょう。』
 人の出入に、少しはざわ付いたけれど、家人の耳にはよもや入るまい。ジュズイ氏は正式の逮捕手続をしていないのを不本意に思ったけれども、事は急だ。千載一遇、この機を逸していつまたルパンを捕え得ようぞ。決然として振い起った。
『よし! やっつけろ!』

          八

 手に手にピストルを握って、ひたすらルパンを捕えることに心奪われつつ、足早に階段を上った。
 ガニマール刑事はもちろんよく勝手を知っていた。スパルミエント夫人の部屋に来ると、扉にのしかかって、叫んだ。
『開けろ!』
 一人の警官は、つと進んで、肩で一突、難なく扉は押破られた。
 が、中には誰もいない。
 隣のビクトアルの部屋へ行った。
 同じく藻抜《もぬけ》のからだ。
『上にいるんだ。ルパンの部屋に‥‥油断するな
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