《こうしゃく》が、水につかってからだを洗っているとき、そこへ王様の馬車が通りかかりました。すると、猫吉はきゅうに、火のつくように、かなきり声をあげてさけびたてました。
「助けてください。助けてください。カラバ侯爵《こうしゃく》がおぼれそうです。」
 王様は、このさけび声を聞くと、なにごとかとおもって、馬車の窓から首をお出しになりました、見ると、しきりにどなっているのは、これまでに、たびたび狩場《かりば》から、いろいろと、けっこうなえものを持ってきてくれた猫なので、王様はおそばの家来《けらい》に、はやく行って、カラバ侯爵《こうしゃく》をお助け申せ、といいつけました。
 家来が、いそいで川へおりて行って、カラバ侯爵《こうしゃく》を引きあげているあいだに、猫吉は王様のところへ出かけて行きました。
「わたくしどもの主人が、川につかって、からだを洗っておりますと、わるものがやって来たのでございます。主人はずいぶん大声で、なんども、どろぼう、どろぼうと申しましたのですが、とうとう、わるものは、着物をぬすんで、もって行ってしまいました。ですから、すぐに着る着物がございません。」
 猫吉は、こう王様に
前へ 次へ
全14ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ペロー シャルル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング