りあげました。
「ならん、ならん。神さまにまかせてしまえ。」
 そのとたん、おもての戸に、ドンと、はげしくぶつかる音がしたので、青ひげはおもわず、ぎょっとして手をとめました。とたんに、戸があいたとおもうと、すぐ騎兵《きへい》がふたりはいって来て、いきなり、青ひげにむかって来ました。これは奥がたの兄弟《きょうだい》で、ひとりは竜騎兵《りゅうきへい》、ひとりは近衛騎兵《このえきへい》だということを、青ひげはすぐと知りました。そこで、あわてて逃げ出そうとしましたが、兄弟はもう、うしろから追いついて、青ひげが、くつぬぎの石に足をかけようとするところを、胴中《どうなか》をひとつきつきさして、ころしてしまいました。
 でもそのときには、もう奥がたも気が遠くなって、死んだようになっていましたから、とても立ちあがって、兄弟《きょうだい》たちを迎《むか》える気力《きりょく》はありませんでした。
 さて、青ひげには、あとつぎの子がありませんでしたから、その財産《ざいさん》はのこらず、奥がたのものになりました。奥がたはそれを、ねえさまやにいさまたちに分けてあげました。

 ものめずらしがり、それはいつでも心をひく、かるいたのしみですが、いちど、それがみたされると、もうすぐ後悔《こうかい》が、代ってやってきて[#「やってきて」は底本では「やっきて」]、そのため高い代価《だいか》を払わなくてはなりません。



底本:「世界おとぎ文庫(イギリス・フランス童話篇)妖女のおくりもの」小峰書店
   1950(昭和25)年5月1日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
入力:大久保ゆう
校正:秋鹿
2006年1月21日作成
青空文庫作成ファイル:
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