ぐつを片足落しました。それを王子は大事にしまっておきました。サンドリヨンは、うちにかえりはかえりましたが、すっかり息を切らしてしまいました。もう馬車も、べっとうもなくて、また、いつもの古着のぼろ[#「ぼろ」に傍点]にくるまったなり、ただ片足だけはいてかえった、金の上ぐつを持っていました。
 さて、サンドリヨンが出て行ったあとで、王様のお城の番小屋へ、おたずねがありました。
「お姫《ひめ》さまが、ひとり、門を出て行くところを見なかったか。」
 ところが、番兵の返事は、
「はい、見たのはただひとり、ひどくみすぼらしいなりをした若いむすめでした。それは貴婦人《きふじん》どころか、ただのいなかむすめとしか、おもわれないふうをしていました。」というのでした。
 さて、ふたりのきょうだいが、ぶとう会からかえってくると、サンドリヨンは、こういって聞きました。
「たんとおもしろいことがありましたか。きれいなお姫さまは、きょうも来ましたか。」
 ふたりがいうには、
「ああ、けれども、その人ったら、十二時を打つといっしょに、あわてて逃げだしたよ。あんまりあわてたものだから、金の上《うわ》ぐつを、片足落して行ったのさ。その上ぐつの、かわいらしいことといってはないものだから、王子は、それをしまっておきなさった。王子はぶとう会でも、しじゅうお姫《ひめ》さまのほうばかり見ていらしった。きっと、王子は、金の上ぐつをはいているきれいなひとを、すいていらっしゃるにちがいないよ。」

         六

 なるほど、ふたりのいったとおりにちがいはありませんでした。それから二三日すると、王子はラッパを吹いておふれをまわして、その金の上ぐつの、しっくり足にはまるむすめをさがして、お妃にするといわせました。そうして、王子は、家来《けらい》たちに、その金の上ぐつを持たせて、王女たちから貴族《きぞく》のお姫さまたち、それから御殿じゅう、のこらずの足をためさせてみましたが、みんなだめでした。
 さて、とうとうまわりまわって、金の上ぐつは、いじのわるい、ふたりのきょうだいたちのところにまわって来ましたから、ふたりとも赤くなって、むりに足をつっこもうとしましたが、どうして、どうして、それはみんな、気のどくな、むだな骨おりでした。
 サンドリヨンは、そのとき、わきで見ていますと、それはなんのこと、じぶんの半分おとし
前へ 次へ
全10ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ペロー シャルル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング