の発見もなく、ルパンは五日を過してしまった。それからまた二日過ぎた真夜中の二時頃、ルパンが二階から廊下へ下りようとすると、ふと扉《と》のきしる音を聞いた。その戸は庭に向いた玄関の方へ続いていた。彼は闇夜を透して見ると二人の男が梯子《はしご》を登ってドーブレクの部屋の前に忍び寄るらしい。耳を澄すと、微かに戸をこじ開ける音が聞える。風の間に間に人の耳語《ささや》き声も耳に触れる。
『工合《ぐあい》は?』
『うん。上等だ……だが明日の晩にのばそうだって……』
ルパンはその先を聞きとれなかったが怪しの男は静かに戸を閉めながら鉄門の闇に消えて行った。
午後になって、ドーブレクの留守を幸い、彼は二階の室《へや》の戸を調べて見た。一見して解った。扉《と》の下のはめ[#「はめ」に傍点]板が一枚巧みにはずされている。して見るとこの邸《やしき》で仕事をしようと云う連中は、かねて彼の家、マチニヨン町とシャートーブリヤン町の家へ忍び込んだやつらと同一だ。
ルパンにとって今日一日は暮るるに早かった。彼の眼前にはまさに一切の秘密が暴露せられんとしているのだ。ただに不可思議極まる、かつは巧妙を尽した手段によっ
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