ろ、警視庁にしろ、この事件の中《うち》へ第三の怪物が飛び込んで来た事を未だに知らないでおる。それだけが彼の身上《しんしょう》だ。彼が最も重要視しておる行動の自由を得しむる唯一の身上である。
彼は何の遠慮もなく、最前ドーブレクが警視総監プラスビイユ宛に届けろと渡した手紙の封を切った。中にはこんな手紙が這入っていた。
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「プラスビイユ君、君の手の届く処にあった。君はそれに手を触れた! 今一息、それでよかったんだ……が君は発見すべく余りに愚《おろか》だ。我輩をして一敗地にまみれしむべく、君以上の発見をし得るものはまずない。あわれフランス!
プラスビイユ、さようなら、しかし、今後もし現場《げんじょう》で君を捕まえたらば、御気の毒ながら、捻り潰すよ。
プラスビイユ君。[#地から7字上げ]ドーブレク拝」
[#ここで字下げ終わり]
「手の届く処……」と読み終えたルパンが呟いた。『あのくらいな悪党になると思い切って真実の事をズバズバ云うものだ。最も簡単なる隠し場所は最も安全なりと云うからな。ともかくにだ……ともかくにと……取調べる必要があるぞ。なぜドーブレクがあの様
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