人のゆきかふ小路正しく連らなりて、※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]犬の此處彼處になく聲もいとのどかなり、
[#ここで字下げ終わり]
其中往來種作。男女衣着悉如外人。黄髮垂髫。並怡(6)然自樂。
[#ここから2字下げ]
其中を往來しつゝたがやす男女の身にまとふ衣を見るに、世のものと異なりて、外國人《とつくにびと》かと怪しまる計り也。又黄色の髮なす老人、もとどりたれたる小兒まで、打まじり、おのがじしたのしむさま、またなく心やすらげに見ゆ、
[#ここで字下げ終わり]
見漁人乃大驚。問所從來。具答之。便(7)要還家。設酒殺※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]作食。村中聞有此人。咸來問訊。
[#ここから2字下げ]
漁人を見つゝいたく打驚き、いづかたより來り給ひしと問ふに、くはしく答へたりしかば、いざ我家《わがや》へとて、いなむをうながし、つれ還へり、酒をまうけ、にはとりを殺し、ねんごろに、ふるまひなすうちに、村のものども、まれびとありと聞きつ、みなこの家へ尋ね來りぬ、
[#ここで字下げ終わり]
自(8)云。先世避秦時亂。率妻子邑人。來此絶境。不復出焉。遂與外人間隔。問今是何世。乃不知有漢。無論魏晉。此人一一爲具言所聞。皆歎※[#「りっしんべん+宛」、第3水準1−84−51]。
[#ここから2字下げ]
あるじ申すやう。それがしの先祖にあたるもの秦時の亂をさけ、妻子及び在所の人をひきつれ、この奧まりたる境へ來しより、再び世に出でざりしかば、遂には外人と相隔たりぬ、そも今は何の世にさむらふぞやといふ、そのさま漢代だにしらず、魏晉は言ふまでもなし、をのかかねて聞けること一一つぶさに語り聞かしゝかば、皆古をしのぶこと限りなし、
[#ここで字下げ終わり]
餘人各復延至其家。皆出酒食。停數日。辭去。
[#ここから2字下げ]
かくて村のものどもまた各をのこを家へ請じ、酒食を供へてもてなしければ、覺えずとゞまること數日にして去りぬ。
[#ここで字下げ終わり]
此中人語云。不足爲外人道也。
[#ここから2字下げ]
其時(9)皆々見送りける其中の一人、御身ここへ來たり給ひしこと他の人々に語るにも及ばぬことに候ぞやといひつつ相別れけり、
[#ここで字下げ終わり]
既出得其船。便扶向路。處處誌之。及郡下。詣太守説如此。太守即(10)遣人隨其往。尋向所誌。遂迷不復得路。
[#ここから2字
前へ 次へ
全4ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
狩野 直喜 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング