無い者はこれこれの罪に当る、と一条一条、書物の上に明白に出ている。家族が何人あろうともそんなことは頓著《とんちゃく》しない」
 七斤ねえさんは書物の上に書いてあると聴いてすっかり絶望した。自分ひとりで慌てたところがしようがないのでたちまち恨みを七斤に移し、箸を取って彼の鼻先きへつきつけ「これは腑抜けのお前が自分で撒いた種だよ。わたしはとうから言っていたんだ。船を出してはいけません、お城へ行ってはいけませんと。ところがあの時どうしても肯《き》かないで、お城へころげ込んで行きやがった。お城へ行くとすぐに辮子を切られてしまった。あの時お前の辮子は黒絹のように光っていたが、今のざまを見ろ。坊主とも道士ともつかない変な頭になってしまった。お前は自業自得で仕方がないが、巻添えを食ったわたし達をどうしてくれるんだえ。活き腐れめ、咎人《とがにん》め」
 村人は趙七爺が村へ来たのを見てみな大急ぎで飯を済まして、七斤家の食卓のまわりに聚《あつ》まった。七斤は自分自身を指折の人物と信じているのに、人前で女からこんな風にコキおろされてははなはだ体裁が好くない。そこでぜひなく頭をあげて愚図々々言った。
「お前は
前へ 次へ
全17ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
魯迅 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング