風波
魯迅
井上紅梅訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)烏臼木《うきゅうぼく》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三代|鋤鍬《すきくわ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「女+息」、第4水準2−5−70]
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河沿いの地面から、太陽はその透きとおった黄いろい光線をだんだんに引上げて行った。河端の烏臼木《うきゅうぼく》の葉はからからになって、ようやく喘ぎを持ち堪えた。いくつかの藪蚊は下の方に舞いさがって、ぶんぶんと呻った。農家の煙筒のけむりは刻一刻と細くなった。女子供は門口の空地に水を撒いて、小さな卓子《テーブル》と低い腰掛をそこに置いた。誰にもわかる。もう晩飯の時刻が来たのだ。
老人と男たちは腰掛の上にすわって無駄話をしながら大きな芭蕉団扇をゆらめかした。子供等は飛ぶが如くに馳《か》け出した。ある者は烏臼木の下にしゃがんで賭けをして石コロを投げた。女は真黒な干葉と松花のような黄いろい御飯を持ち出した。熱気がもやもやと
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