想い出しても、人の悲しみを催す。これはまったく奇妙なことだ。

        一二

 想像することも出来ない。
 四千年来、時々人を食う地方が今ようやくわかった。わたしも永年《ながねん》その中に交っていたのだ。アニキが家政のキリモリしていた時に、ちょうど妹が死んだ。彼はそっとお菜の中に交ぜて、わたしどもに食わせた事がないとも限らん。
 わたしは知らぬままに何ほどか妹の肉を食わない事がないとも限らん。現在いよいよ乃公の番が来たんだ……
 四千年間、人食いの歴史があるとは、初めわたしは知らなかったが、今わかった。真の人間は見出し難い。

        一三

 人を食わずにいる子供は、あるいはあるかもしれない。
 救えよ救え。子供……
[#地から2字上げ](一九一八年四月)



底本:「魯迅全集」改造社
   1932(昭和7)年11月18日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
その際、以下の置き換えをおこないました。
「彼奴→あいつ 貴郎→あなた 或→ある・あるい(は) 如何なる→いかなる 〜戴く→〜い
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