ながねん》のしきたりで悪い事とは思っていないのだろう。それとも良心を喪失してしまって、知っていながらことさら犯しているのだろう。
 わたしは食人者を呪う。まず彼から発起して食人の人達を勧誘し、また彼から先手をつける。

        八

 実際この種の道理は今になってみると、彼等もわかり切っているのだ。
 ひょっくり一人の男が来た。年頃は二十前後で、人相はあまりハッキリしていないが、顔じゅうに笑いを浮べてわたしに向ってお辞儀をした。彼の笑いは本当の笑いとは見えない。わたしは訊いてみた。
「人食いの仕事は旨く行ったかね」
 彼はやっぱり笑いながら話した。
「餓饉年じゃあるまいし、人を食うことなど出来やしません」
 わたしは彼が仲間であることにすぐに気がついた。人を食うのを喜ぶのだろうと思うと、勇気百倍して無理にも訊いてやろうと思う。
「うまく行ったかえ」
「そんなことを訊いてどうするんだ。お前は本統《ほんとう》にわかるのかね。冗当を言っているんじゃないかな。きょうは大層いい天気だよ」
 天気もいいし月も明るい。だが乃公はお前に訊くつもりだ。
「うまく行ったかえ」
 彼はいけないと思っ
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