太を整列した門が彼の後ろを閉じた。その他の三方はキッタテの壁で、よく見ると室《へや》の隅にもう二人いた。
 阿Qはずいぶんどぎまぎしたが、決して非常な苦悶ではなかった。それは土穀祠《おいなりさま》の彼の部屋はこの部屋よりも決してまさることは無かったからだ。そこにいた二人は田舎者らしく、だんだん懇意になって話してみると、一人は挙人老爺の先々代に滞っていた古い地租の追徴であった。もう一人は何のこったか好く解らなかった。彼等は阿Qにわけを訊くと、阿Qは臆面なく答えた。「乃公は謀叛を起そうと思ったからだ」
 阿Qは午後から丸太の門の外へ引きずり出され大広間に行った。正面の高いところにくりくり坊主の親爺が一人坐していた。阿Qはこの人は坊さんかもしれないと思って、下の方を見ると、兵隊が整列して、両側に長い著物を著た人が十幾人も立っていた。その中にはイガ栗坊主の親爺もいるし、一尺ばかり髪を残して後ろの方に披《さば》いていた偽毛唐によく似た奴もあった。彼等は皆同じような仏頂面で目を怒らして阿Qを見た。阿Qはこりゃあきっとお歴々に違いないと思ったから、膝の関節が自然と弛んでべたりと地べたに膝をついた。

前へ 次へ
全80ページ中69ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
魯迅 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング