う話を聞き及んで、今年また眼《ま》ぢかに殺された革命党を見た。彼はどこから来たかしらん、[#「、」は底本では「。」]一種の意見を持っていた。革命党は謀反人だ、謀反人は俺はいやだ、悪《にく》むべき者だ、断絶すべき者だ、と一途にこう思っていた。ところが百里の間に名の響いた挙人老爺がこの様に懼《おそ》れたときいては、彼もまたいささか感心させられずにはいられない。まして村鳥のような未荘の男女が慌て惑う有様は、彼をしていっそう痛快ならしめた。
「革命も好《よ》かろう」と阿Qは想った。
「ここらにいる馬鹿野郎どもの運命を革《あらた》めてやれ。恨むべき奴等だ。憎むべき奴等だ……そうだ、乃公も革命党に入ってやろう」
阿Qは近来生活の費用に窘《くる》しみ内々かなりの不平があった。おまけに昼間飲んだ空《す》き腹《ばら》の二杯の酒が、廻れば廻るほど愉快になった。そう思いながら歩いていると、身体がふらりふらりと宙に浮いて来た。どうした機《はずみ》か、ふと革命党が自分であるように思われた。未荘の人は皆彼の俘虜《とりこ》となった。彼は得意のあまり叫ばずにはいられなかった。
「謀反だぞ、謀反だぞ」
未荘の人は皆
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