な馬の脚に過ぎなかった。彼は垣の上にあがることも出来なければ、洞《あな》の中に潜ることも出来なかった。ただ外に立って品物を受取った。ある晩彼は一つの包《つつみ》を受取って相棒がもう一度入ると、まもなく中で大騒ぎが始まった。彼はおぞけをふるって逃げ出し、夜どおし歩いて終に城壁を乗り越え未荘に帰って来た。彼はこんなことは二度とするものでないと誓った。この弁明は阿Qに取ってはいっそう不利益であった。村の人の阿Qに対して「敬して遠ざかる」ものは仕返しがこわいからだ、ところが彼はこれから二度と泥棒をしない泥棒に過ぎないのだ。してみると「これもまた畏るるに足らない」ものだった。

        第七章 革命

 宣統《せんとう》三年九月十四日――すなわち阿Qが搭連を趙白眼に売ってやったその日――真夜中過ぎに一つの大きな黒苫《くろとま》の船が趙屋敷の河添いの埠頭に著いた。この船は黒暗《くらやみ》の中に揺られて来た。村人はぐっすり寝込んでいたので、皆知らなかった。出て行《ゆ》く時は明け方近かったがそれがかえって人目を引いた。こっそり調べ出した結果に拠ると、船は結局挙人老爺の船であると知れた。
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