》のために確実に殺された。
阿Qは本来正しい人だ。われわれは彼がどんな師匠に就いて教《おしえ》を受けたか知らないが、彼はふだん「男女の区別」を厳守し、かつまた異端を排斥する正気《せいき》があった。たとえば尼、偽毛唐の類《るい》。――彼の学説では凡ての尼は和尚と私通している。女が外へ出れば必ず男を誘惑しようと思う。男と女と話をすればきっと碌なことはない。彼は彼等を懲しめる考《かんがえ》で、おりおり目を怒らせて眺め、あるいは大声をあげて彼等の迷いを醒《さま》し、あるいは密会所に小石を投げ込むこともある。
ところが彼は三十になって竟《つい》に若い尼になやまされて、ふらふらになった。このふらふらの精神は礼教《れいきょう》上から言うと決してよくないものである。――だから女は真に悪《にく》むべきものだ。もし尼の顔が脂漲っていなかったら阿Qは魅せられずに済んだろう。もし尼の顔に覆面が掛っていたら阿Qは魅せられずに済んだろう――彼は五六年|前《ぜん》、舞台の下の人混《ひとご》みの中で一度ある女の股倉《またくら》に足を挟まれたが、幸いズボンを隔てていたので、ふらふらになるようなことはなかった。ところ
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