であった。牧師は百ヤードばかりはなれた大きなそしてもっと便利な入口に彼等を案内した。そこから彼はたった今地下を調査して出て来たばかりであった。ここでは少し下り道ななだらかな傾斜なのでだんだんに暗さをます以外にはさして困難ではなかった。彼等は松脂《まつやに》のように黒い磨り減らしたトンネルの中に動いてるのがわかった。そして彼等が上の方に一条の光線を見たのはそれからまもなくであった。その沈黙の進行の間に一度誰れかの呼吸のような音があった。それは誰れのであるか言う事は不可能であった。そして一度そこにはにぶい爆音のような嘲罵《ちょうば》があった、そしてそれはわからない言葉であった。
 彼等は円いアーチの会堂のような円い小室《こべや》に出て来た。なぜならその会堂はゴシック式の尖端《さき》のとがったアーチが矢尻のように吾々の文明をつきさす前に建てられたものであるから、柱と柱の間の青白い一条の光りが頭上の世界への他の出入口を示した。そしてまた海の下に居るという漠然たる感じを与えた。
 ノルマン風の犬歯状の模様が、巨大な鯊《はぜ》の口に似たある感じを与えて、底知れぬ暗さの中《うち》に、アーチ中にかすか
前へ 次へ
全53ページ中27ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
チェスタートン ギルバート・キース の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング