あ!」とダイアナ夫人は息がつまるように叫んだ、「まあ私は今あなたのおっしゃる事がわかりますわ、あなたは私達が殺人者に逢った事を私達に話すおつもりなんです、殺人者と話した戯談《じょうだん》を言って、彼にロマンテックな話をさせ、そしてそのままに彼を離そうとなさるおつもりなんです」
「岩の上に彼の僧侶の仮装を残してな」とブラウンは補《お》ぎなった。「それは皆至極簡単じゃ。この男は教会と会堂へ行く競争で教授より先きであった。たぶん教授があの新聞記者と話していた間にな。彼は空の棺桶の側に老牧師と共に進んで来た、[#「、」は底本では欠落]そして彼を殺ろしたのじゃ。それから彼は死骸から取った黒い着物を着け、調査間に発見した所の古るい法衣でそれを包んだのじゃ、それからわしが述べたように珠数やそして木の支え棒を手配して、それを棺の中に入れたわけじゃな。それからじゃ、彼の第二の敵に係蹄《わな》をかけて、彼は太陽の光りの所に出て来て田舎の牧師の最も叮嚀さを以て吾々一同に挨拶をしたのじゃ」
「彼はおそろしい冒険をしたですな」とターラントは異議を申し立てた。「誰れかが見てウォルタース氏である事がわかるかもしれないのにな」
「わしは彼は半気違いになったと思いますわい」と師父ブラウンは同意した。「してわしはあんたもその冒険はやる価値があったという事を認めなさるじゃろう、なぜなら彼は逃げてしまったのじゃからな、結局」
「私は彼は非常に好運だった事は認めますな」とターラントはうなり声で言った。「してそやつは一体誰れですか?」
「あんたが言われる通り、彼は非常に幸運じゃったよ」ブラウンは答えた、「してその点に関しては少なからずな、なぜならそれは吾々が決してわからないかもしれん一事であるからな」
彼は一瞬間恐ろしい顔をして卓子《テーブル》をにらんだ。それから言葉を続けた。「この人間は長年の間徘徊したりおどしたりしておったのじゃ、しかし彼が用心深かった一事は彼は誰れであったかを秘密にしてる事であったのじゃ。そして彼は今なおそれを保っているのですぞ。わしが考えた様に、気の毒なスメール教授が正気にかえられれば、あんたはそれについてもう聞かないじゃろうというのはかなり確かですわい」
「まあどうして、スメール教授はどうなさるのでしょうか、どうお考えになりますか?」とダイアナ夫人が訊ねた。
「彼がするであろう最初
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