が気づいた最初の事は十字架、むしろ十字架を支えてる紐でありましたのじゃ、当然、あんた方にとっても、それはただ小珠《こだま》の紐であった。[#「。」は底本では欠落]特別にどういうものではなかったのじゃ、が、しかしまた当然、それはあんた方のよりはわしの職掌にあったのじゃからな。あんた方はそれが毛皮製の頸巻が全く短くあったかの如くに、ほんの二三の小珠が見えたばかりで、顎にズット近くおかれた事を御記憶じゃろう。その外に見えてた小珠は変った風にならべられておった。最初の一つそれから三つ、そして続いてな、事実において、わしは一目見てそれは珠数《じゅず》、すなわちそれの一端に十字架のついてる普通の珠数であった事がわかってしまったじゃ。しかし球数は少くとも五十珠とそれに附加する小珠を持ってますのじゃ、それでわしは当然それの残りのものはどこにあるかを不思議に思いよったのじゃ。それは老人の頸を一まわり以上まわるに違いありませんわい。わしはそのときにはそれを判断する事が出来なんだ。がその残りの長さがどこに這入ってるかを想像したのはすぐその後じゃったよ、それは蓋を支えてた、棺桶の角にくっつけられておった木の棒の足にぐるぐるとまかれてあったのじゃ、いいかな、それは気の毒なスメールがほんのちょっと十字架に触った時、それがそこからその支え棒をはずしたのだ、そして蓋が石の棍棒のように彼の頭に落ちたのじゃ」
「ヤレヤレ!」ターラントが言った、「僕はあなたのいわれる事に何物かがあると考え出してますよ。もしそれが事実としたらこりあ奇妙な話しですね」
「わしはそれが解った時に」と師父ブラウンが続けた。「わしは多少他の事も推察する事が出来ましたのじゃ。まず最初に、調査以上に何事に対しても信用すべき考古学上の権威がなかったという事と、記憶なされ、気の毒な老ウォルター氏は正直な好古家であったのじゃ、彼はミイラにされた死骸についての伝説に何か真実があったかどうかを見出そうと墳墓を開ける事に従事しておられたのじゃ、その他の事は皆、かかる発見をしばしば予想しまたは誇張して言う、風説でありますのじゃ。事実、彼はミイラにされていたのでなく、長い間埃の中に埋まっていたのだという事を発見されたのじゃ。彼が埋まった会堂の中でさびしい蝋燭の光りをたよりにそこで仕事をしていた時に、蝋燭の光りは彼自身のではない他の影を投げた」
「あ
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