の銃声、続いてアッと消魂《たまぎ》る叫び。
彼れは素早く身を翻《ひるがえ》して家を一周して、食堂へ飛び込んだ。
『馬鹿野郎ッ! 何を手前《てめえ》達ァ為《や》ってるんだッ』
見ればジルベールとボーシュレーとは組んづ解《ほぐ》れつの大挌闘、血塗れになって床の上を上になり下になって転々しておる彼等の衣服は血だらけだ。ルパンが飛びかかって二人を引き分けようとする時、早くもジルベールは相手を組み伏せてルパンの気付かぬ間にその手から何ものかを引奪《ひったく》った。ボーシュレーは肩に受けた傷にそのまま正気を失ってしまった。
『誰れが傷《や》っ付けたんだ? 貴様か、ジルベール?』と激怒したルパンが恐ろしく問いつめた。
『いいえ……レオナールです……』
『何ッ? レオナール? 縛られてるじゃないか……』
『縛られていを縄を解いて、ピストルで……』
『畜生ッ。どこに居《お》る?』
ルパンはランプを提げて事務室へ入った。
書記は仰臥《あおむけ》に倒れて手足を突張り、咽《のど》には匕首《あいくち》が突刺さって、顔色は紫色に変っていた。そして口からは一線の生血がタラタラと流れて、
『アッ』と云ったルパ
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