な声で確かに書記の居《お》る室から来るらしい。
『助けてくれ! ……人殺し! ……助けてくれ! ……殺されそうだ……警察へそう云ってくれ……』
『奴《やっこ》さん、気が狂ったんだな』とルパンは呟いた。
『畜生、今頃警察々々って騒いだってどうなるものか、馬鹿野郎めが……』
彼は委細構わず仕事を続けたが、後から後から珍品が出て来てどうしても残す気になれなかったのと、今一ツにはボーシュレーとジルベールが下らぬものに目を付けて熱心に捜し廻ったために案外時間がかかった。
ついに彼も辛抱し切れなくなって、
『もうたくさんだ。いくら目星《めぼ》しいからって洗いざらい持って行かれるものじゃあない。自動車も待っておるんだ。さあ端艇《ボート》に乗ろうよ』
彼等は湖水の岸まで来た。ルパンは先に立って階段を下りた。とジルベールがその袖を引いて、
『ねえ、首領《かしら》、もう一遍ぜひ捜したいんです。たった五分間でいいから捜さして下せえ』
『え、なぜだい、もう大抵にしろよ』
『実ァこうなんです……何んでも話に聞くにゃあ、古い聖骨匣《せいこつばこ》があるんでさあ……実に素敵なんですって……』
『それがどうだ?
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