回復した時には、彼はアミアンのあるホテルの一室に横わっていた。

『いや全く驚きましたよ。首領の仆れていたなあ急勾配の大岩石の突端で、一ツ転がりゃあ粉微塵ですからね。今考えてもゾッとしますよ』とルバリュが云っていた。
『ジルベールが死刑の宣告を受けてから今日で十八日……私はホントにどうしたらいいでしょう』とメルジイ夫人は涙声。ルパンは病床にあって、ハッと思うとまたしても意識が朦朧となってしまった。
 ルパンの病中、メルジイ夫人は一ツにはドーブレクの動静を捜り、一ツにはジルベールの様子を聞くために巴里《パリー》へ行った。しかしドーブレクの行方はまだ解らなかった。数日の内にルパンは元気を恢復した。そして部下二名と共に巴里《パリー》へ乗り込んだ。とその日ドーブレクは飄然姿を自分の邸に現わし、アッと思う間にまたしても行方不明になった。まもなくメルジイ夫人から手紙が来て、自分はドーブレクの後を尾行して行くからリオン停車場へ来てくれと云って来た。
 早速ルパンが部下をつれて駈け付けた時は、列車はすでにモントカロへ向って出発した後であった。
 ルパンはすぐに後を追った。しかしモントカロへ着くと、再び
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