いる。少年は静かに父を呼んだ。
「お父様……、お父……僕です、ボートルレです。早く起きて下さい、静かに静かに……」
父は急いで着物を着て、部屋を出ようとする時、低い声で囁いた。
「この城の中に閉じ込められているのは私ばかりではない……」
「ああ、誰?ガニマール?ショルムス?」
「いいえ、そんな人は見たことがない。若い令嬢だ、」
「ああ、レイモンド嬢です、きっと。どの部屋にいらっしゃるか知っていますか。」
「この廊下の右側の三番目。」
「青い部屋です。」とバルメラ男爵がいった。
すぐに扉を破り、レイモンド嬢は救い出された。
みんなは元の小門へ出て、学生たちの張番《はりばん》しているのと一緒になり、無事に古城から逃れ出ることが出来た。
ボートルレは宿へ着くと、種々《いろいろ》とルパンのことを父や令嬢に尋ねた。その話によると、ルパンは三四日目ごとに来て、父と令嬢の部屋を必ず訪ねた。その時のルパンは優しく叮嚀であった。ボートルレとバルメラ男爵が城へ忍び込んだ時には、ちょうどルパンはいなかった[#「いなかった」は底本では「いかなった」]。
ボートルレは早速警察へ古城のことを報告した。警
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