ら冷汗《ひやあせ》がぽたりぽたりと落ちると、番人はランプを持ってこちらへ近づいてくるらしく、光が自分の方に動いてくる。
 ボートルレはバルメラ男爵に縋ろうとしてふと見ると、驚いたことにはバルメラ男爵は、闇黒《くらがり》を忍び忍び先へ進んでいる。しかも番人の男のすぐ近くまで進んでいっている。
 ふいにバルメラ男爵の姿が消えたと思うと、突然一個の黒い影が夜番の男の上におどり掛った。ランプが消えた。格闘の音がする。二つの黒い影が床の上に転がった。ボートルレがはっと跳ね上って近よろうとすると、一声の唸《うめ》き声が起った。一人の男が立ち上って少年の腕を握った。
「早く……行こう。」
 それはバルメラ男爵であった。

            開かれた城の門

 二人は二つの階子《はしご》をのぼった。「[#「「」は底本では欠落]右へ……左側の四番目の部屋。」とバルメラ男爵が囁く。
 二人はすぐにその部屋を見つけた。少年の望みは今遂げられた。父はこの扉一枚の中に閉じ込められているのだ。ボートルレはしばらく掛ってその鍵を破り、室屋《へや》の中へ入った。少年は手探りで父の寝台へ進んだ。父は安らかに眠って
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