消えたのは、その叢の中の潜戸ですね、よし、勝利は私たちのものです、お互に力を協《あ》わせてやりましょう。」

            夜陰の城へ

 二人は種々《いろいろ》と考えをめぐらし、支度を整えた。バルメラ男爵は馬方に、ボートルレは椅子直しに変装した。二人の他にボートルレの学校の友達が二人、その二人も同じように椅子直しに身を変えた。そして四人はいよいよ城のあるクロザンへ入り込んだ。
 みんなは三日間その村にいて古城のまわりを密かに調べながら、月のない暗い夜を待った。
 四日目の夜、空は真黒《まっくろ》な雲に覆われた。バルメラ男爵はいよいよ今夜忍び込むことに決めた。
 四人は忍びながら林の中を通りすぎて例の叢の小門《しょうもん》に近づいた。ボートルレは鍵を挿し込んで静かに※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]した。戸は幸に音もなく開いた。二人の友達を外に見張りさせて、ボートルレとバルメラ男爵は庭の中へ入り込んだ。その時空の雲が途切れて月の光が芝生の上に流れた。二人はその蒼い月の光で古城をあおぎ見ることが出来た。それはたくさんの針のように尖った屋根が、真中に聳え立っている櫓を囲ん
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