、その男の後をつけることにした。
 少年の胸はおどった。父の隠されているその城へ近づいているかもしれない。
 怪しい男はこんもりと繁っている森の中へ入ってしまったが、やがてまた森を出て明るい道へ姿を現わした。
 ボートルレ少年が森の中を通ってふと前の道へ出ると驚いた。男の影も形もなくなっている。きょろきょろあたりを見まわした少年は、たちまちあ!と叫んで元の森の中へ飛んで帰って身を隠した。見よ!少年の右手の方に大きな塀で囲まれた、巨大な古城が聳え立っているではないか。
 これだ!これだ!父が閉じ込められている城はこれだ!ルパンがその誘拐した人を閉じ込めている牢屋はとうとう見つけ出された。
 少年は自分の身体を見られないように用心しながらその城を見ていた。そしてその日はそれで止めた。よく落ちついて考えてから仕事に掛らなければならない。
 少年は戻り掛けた。途中で二人の田舎娘に逢ったので早速尋ねてみた。
「あの、森の向《むこ》うにある古いお城は何という城ですか?」
「あれはね、エイギュイユ城っていうのよ。」
 少年はその答えを聞いてはっと驚いた。
「え!エイギュイユ城ですって……ここは何県で
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