思ったのでしょう。」
「しかし誰が、誰が私の家の中へ入ってきたのでしょう?」
「それは分りませんね、だが父がこの写真で騙されたのはきっと本当です。港へ大急ぎで行って、誰かに尋ねて調べてごらんなさい。」
 フロベルヴァルは全く驚き入ったというような目つきでボートルレの顔を見ていたが、帽子を握って、
「シャルロット、お前も一緒に港まで行くかい?」
「いや。」ボートルレはそれをさえぎって、「僕はお嬢さんに種々《いろいろ》話し相手になってもらいたいことがありますから。」

            少女の罪

 フロベルヴァルは出ていった。ボートルレと少女とは室の中に二人きりになった。少年と少女は眼を見合わした。ボートルレは優しく少女の手をとった。少女はしばらく黙ってそれを見ていたが、急に両腕の間に顔をうずめて泣き出した。ボートルレは言葉静かに、
「ね、みんなあなたがしたのでしょう、よその知らない男が、あなたにこの写真を持っていってくれって頼んだんでしょう、そしてその男はリボンでも買えってお金をくれたんでしょう、ね、あなたは写真を父のところへ持っていってやり、外出の仕度もしてやったんでしょう。」
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