惚《うぬぼ》れでしょう、君がいろんなことを考えるように、他の者だってやはり考えをめぐらしているんですよ。」
少年は今こそ巨盗のあらゆる憎むべき行《おこない》に対して、痛烈に[#「痛烈に」は底本では「通烈に」]復讐の言葉を浴びせている。彼はなお、
「ルパン君、僕のお父さんは、あんな寂しいサボア県なんかにはいやしないんだよ。聞かせてあげようか、お父さんは、二十人ばかりの友人に守られて、シェルブールの兵器庫の役人の家にいるんです。夜になると堅く門を閉め、昼間だってちゃんと許しを受けないと入ることの出来ない兵器庫の中ですよ。」
少年はルパンの面前で立ち止り、子供同志がべっかんこをする時のように、顔を歪めて嘲《あざけ》った。
「え、どうです先生!」
しばらくの間ルパンは身動きもせずに立っていた。彼は何を考えているのであろう。今にも少年に飛び掛るのではないかとさえ思われた。
「え、どうです、先生?」とまた少年は嘲笑った。
ルパンは卓上にあった電報をとり上げて少年の眼の前に差しつけながら、凄い落ちつきを見せていった。
「ごらん、赤ちゃん、これをお読み!」
ボートルレは、ルパンのその態度にた
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